Home > 2011年08月

2011年08月 Archive

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
  • Comments (Close): -
  • TrackBack (Close): -

見えないグリーン

  • Posted by: おてもと
  • 2011-08-30 Tue 23:18:02
  • 読書
――恐るべきミスタ・グリーンは
姿を見ることあたわず。
犯罪はありや?
氏はその時刻(とき)、その場に居合わせず。
人死(ひとじに)とや?
氏は風のように消えしや、
はたまた背景に溶けこみしや、
恐るべきミスタ・グリーン。

見えないグリーン (ハヤカワ・ミステリ文庫)見えないグリーン (ハヤカワ・ミステリ文庫)
(2008/09)
ジョン・スラデック
原題「Invisible Green」
ミステリ好きの集まり“素人探偵会”が35年ぶりに再会を期した途端、メンバーのひとりである老人が不審な死を遂げた。現場はトイレという密室―名探偵サッカレイ・フィンの推理を嘲笑うかのように、姿なき殺人鬼がメンバーたちを次々と襲う。あらゆるジャンルとタブーを超越したSF・ミステリ界随一の奇才が密室不可能犯罪に真っ向勝負! 本格ファンをうならせる奇想天外なトリックとは(あらすじより抜粋)。

嬉しい。
やっと読めた。
もちろんスラデック作品は初。

とまあ読み終えてみると、そこに残る読後感は至って普通。
“素人探偵会”の面々も、探偵役のサッカレイ・フィンの印象もそこまで強くなく、期待度のすべてを満たしてくれた作品とは言い難い。
「オイオイ、ミスター・グリーンって一体誰なんだよ!?」
とも、特に気にならず。

しかし、この作品を牽引していくのは、第1の殺人での不可能興味なのではないでしょうか。
わずかな隙間しかないトイレで、被害者は窒息死していた。
いったいどうやって?
その強烈なハウダニットが「ラストまで読みたい」と思えて、途中で飽きることなく読めた最大の要因です。

(最大限に憂慮し、具体的な記述は避けていますが、ここからそのトリックについてネタバレする恐れがあります。
ご注意ください)

これは個人的な趣味ですが、私は心理的な密室(証人が時間や場所などを勘違いして犯人のアリバイをつくってしまうとか)トリック、つまり人間の心が作り出してしまう密室が好きです。

この作品のケースはどちらかというと(苦手な)機械トリックに分類されます。
しかし、探偵フィンの真相解明で、かなりの衝撃を受けました。拍手しました。
「なるほど、そうだったのか!」
素晴らしいトリックです。これだけでも、一読の価値ありでした。

ただ、第1の殺人の被害者がキャラクターとして一番好きだったんだけどなぁ。
共産主義者に付け回され、破壊工作からイギリスを守っていると信じ込んでいる(勘違いしている)元軍人。
残念です。

SFが中心だったジョン・スラデックはミステリを数編しか書かず、2000年に没。
こちらも残念です。

さて数日前、東京都現代美術館にて「名和晃平 シンセシス」を観て来ました。
面白かったのですが、普段接していないものに長時間触れたせいか、帰り道はふくらはぎが原因不明の筋肉痛。
急に刺激を与えず、身体は慣らしていきましょう。

シンセシス

寒い国から帰ってきたスパイ

  • Posted by: おてもと
  • 2011-08-25 Thu 23:06:15
  • 読書
近唯一あった楽しみといえば、池袋西武の催し「古本まつり」。
年に数回の開催、今回も偶然足を運ぶことができました。
欲しい本を列記した帳面を片手に徘徊するのが楽しくて仕方がないんですが、今回は特に素晴らしい結末が。
文庫棚を眺めていると。普段は見慣れない背表紙が。
(あら、これは何かしらん?)

み、
『見えないグリーン』(きっと声に出てた)!

さらにそのすぐ脇には『寒い国から帰ってきたスパイ』!

入手本リスト筆頭を2冊も手に入れ、かなり至福です。
と、いうわけで。
寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)寒い国から帰ってきたスパイ (ハヤカワ文庫 NV 174)
(1978/05)
ジョン・ル・カレ
原題「The Spy Who Came in from the Cold」
薄汚れた壁で東西に引き裂かれたベルリン。リーマスは再びこの街を訪れた。任務失敗のため英国諜報部を追われた彼は、東側に多額の報酬を保証され、情報提供を承諾したのだ。だがすべては東ドイツ諜報部副長官ムントの失脚を計する英国の策謀だった。執拗な尋問の中で、リーマスはムントを裏切者に仕立て上げていく。行手に潜む陥穽をその時は知るよしもなかった……。英米の最優秀ミステリ賞を独占したスパイ小説の金字塔(あらすじより抜粋)。

『鷲は舞い降りた』でその門を叩いたスパイ・冒険小説。
『シャドー81』で完全にその虜となり、次に読みたいのがこの1冊でした。

舞台は冷戦中の東ドイツ。
冷戦なんて、今となっては歴史の1ページ、過去の遺物となってしまった感があります。
映画や小説でしか触れることしかできませんが、この作品で当時の暗い雰囲気を少し知ることができたような気がします。

裏切り、報復、また裏切り。
主人公のリーマス、そして諜報部の巨大な真意に振り回されるように物語が進んでいきます。
登場人物それぞれの思惑のどれが目的で真実なのか。
次第に誰も信用できなくなっていきました。

ゴルゴが好きなので、この時代設定や舞台は個人的に楽しめます。
なんというか、何が(どちらが)悪なのかが決められない世界。
この書き方だと語弊がありそうですが、決して主人公サイドが善ではないということ。
そんなスパイの世界。

最終的に、個人的には『鷲』『シャドー』のインパクトには及びませんでした。残念。
しかし、読後感の余韻は大好きです。
そう考えてみると、映画『ナイロビの蜂』の原作もル・カレでしたね。

次回はもちろん『見えないグリーン』をお送りします。

男の首/黄色い犬

  • Posted by: おてもと
  • 2011-08-17 Wed 23:47:09
  • 読書
ジョルジュ・シムノンが生み出した、フランス人の警察官探偵・メグレ警部の中編2編を収録した1冊。
男の首,黄色い犬 (創元推理文庫 139-1)男の首,黄色い犬 (創元推理文庫 139-1)
(1981)
ジョルジュ・シムノン
原題「La Tête d'un homme / Le Chien jaune」
サンテ監獄の厳戒房舎第11号監房は、異常な緊張に包まれていた。2名の婦人を殺害したため、その日の朝、死刑を宣告された凶悪な殺人犯が、無名の手紙に誘導され、いま脱獄しつつある。50メートル背後の闇の中ではメグレ警部の一行が、犯人の背後にひそむ真犯人を捕えるために監視している。歴史的名作『男の首』に、『黄色い犬』を併載(あらすじより抜粋)。

特に『男の首』は数々のベストにもランクインしている、シムノンの代表作。
メグレ警部モノは『メグレと老婦人』以来2冊目でしたが、やはりこちらの方が読んでて楽しかった。
「自らが一度は逮捕した男の無実を晴らすために脱獄させ、真犯人を追う」というプロットが素晴らしい。
スタートからゴールまで続きが気になって仕方がない。
苦悩するメグレが存分に描かれていおり、何とも言えない読後感含め、良作でした。
読む側としても『男の首』でカロリーを使い果たしてしまったのか、『黄色い犬』は至って普通の印象です。

メグレはその人間観察の鋭さから、犯人の視点や心情に立って捜査を進めていく探偵です。
その信念がかいま見える、メグレとコメリオー判事とのやりとりを抜粋して、本日は終了。

「しかし、そういう君自身が、あの男を逮捕したんだぜ!」
「それは、警察官としては、私は物的証拠から論理的な結論を引き出すようにしなければならないからです……」
「すると、人間としては?」
「心的証拠のほうも考えなければ……」
(中略)
「君は自分の職を賭けることになるんだぜ、メグレ君? よく考えたまえ!」
「十分考えた上でのことです……」


日本はもうすぐ熱帯になる。
みなさん、お元気で。

ミステリの女王の冒険―視聴者への挑戦

  • Posted by: おてもと
  • 2011-08-14 Sun 11:54:37
  • 読書
運にもブックオフで手に入ったので、読んでみました。
アメリカのTVドラマ『エラリー・クイーン』のシナリオ集です。
ミステリの女王の冒険―視聴者への挑戦 (論創海外ミステリ)ミステリの女王の冒険―視聴者への挑戦 (論創海外ミステリ)
(2010/02)
エラリー・クイーン
原題「The Adventure of the Grand Old Lady and other Television Adventures of Ellery Queen」
1970年代半ばにアメリカで放映されたテレビドラマ『エラリー・クイーン』は、『刑事コロンボ』のコンビ、R・レヴィンソンとW・リンクが製作総指揮を務めた本格ミステリドラマである。本書はそのシナリオのうち、英国女流ミステリ作家とエラリーが推理を繰り広げる未制作シナリオの表題作ほか、4本を収録。さらにシリーズガイドと、全23話のエピソードガイドを併録したファン必携の一冊。“シナリオ・コレクション”第6弾(あらすじより抜粋)。

このドラマの魅力は何と言っても、『刑事コロンボ』を創り出したR・レヴィンソンとW・リンクが製作しているということです。
『コロンボ』の後期の名シナリオライターであるピーター・S・フィッシャーも参加とあり、個人的にはたまらない布陣。
もちろんドラマは未視聴ですが、そのシナリオだけでも立派なミステリ作品に仕上がってます。

収録作は次の通り。

『十二階特急の冒険』 The Adventure of the 12th Floor Express
『黄金のこま犬の冒険』 The Adventure of the Chinese Dog
『奇妙なお茶会の冒険』 The Adventure of the Mad Tea Party
『慎重な証人の冒険』 The Adventure of the Wary Witness
『ミステリの女王の冒険』 The Adventure of the Grand Old Lady

最も唸ったのが『十二階特急の冒険』。本家並みに秀逸なシナリオだと思いました。法廷モノ『慎重な証人の冒険』も印象に強く残ります。
他にも「エラリー・ミーツ・アガサ」な表題作もドラマならではの豪華なエピソードだし、唯一の原作付きの『奇妙なお茶会の冒険』も上手く仕上がっているシナリオだと思います。
ただ、原作ありのエピソードが少なかったのが意外。

三谷幸喜も『このミス2011』で個人ベストに挙げてた一冊で、なるほどこのドラマの“視聴者への挑戦”の演出は、『古畑任三郎』にも踏襲されていますね。

本書の解説に「2010年にDVD化?」という記述がありましたが、未だその話は実現していないようです。
町田暁雄さんによる巻末のシナリオ解説はドラマを観ながら読みたいので、一時保留。
一日も早いリリースを望みます。
よろしくね。

ロックリッジ氏の謎の失踪!
裏で糸を引くのは不思議の国のアリスか?
眠りネズミか? 三月ウサギか?
広報担当者か? 義理の母親か?
それとも他の誰かか?
エラリー・クイーンと推理を競おう!
――Who done it?

愛は血を流して横たわる

  • Posted by: おてもと
  • 2011-08-02 Tue 23:01:02
  • 読書
ちらも初めて読む作家、エドマンド・クリスピンの一冊。
愛は血を流して横たわる 世界探偵小説全集(5)愛は血を流して横たわる 世界探偵小説全集(5)
(1995/04)
エドマンド・クリスピン
原題「Love Ries Bleeding」
美しい女子生徒の失踪、化学実験室の盗難事件と終業式を前にあいつぐ不祥事に校長は頭を悩ませていた。しかし、終業式前夜、この学園の小さなミステリは、突如として教員の二重殺人事件へと発展した。来賓として居合わせたオックスフォード大学の名探偵ジャーヴァス・フェン教授は協力を請われ、さっそく事件現場へ急行、酸鼻な犯行に目を見張った。さらに翌日、郊外のあばら家で第三の死体が発見され、事件はますます混迷の度を深めていった…。連続殺人、失蹟事件、シェイクスピア原稿の謎と、息もつがせぬ展開の底に流れる不気味なユーモア、錯綜する論理と巧みなサスペンス。ポスト黄金時代を代表する本格派クリスピンの最高傑作(あらすじより抜粋)。

例によってドタバタする学園モノ。
事件発生、容疑者への尋問と淡々と話が進んでいくのですが、時間もかからず読みやすい。
女生徒の失踪から連続殺人まで、いくつもの事件がひとつのゴールに向かって収束していく様が見事でした。
トリックがややこしいとか分かりにくいという意見もあるようですが、自分としては割と納得。

クリスピンは「ポスト黄金時代」、江戸川乱歩が俗に言う「新本格」の作家です。
読む前は難解で読みにくいんじゃねぇかというイメージ(これはきっとイネスのせい)がありましたが、全くそんなこともなく、満足です。
それはキャラクターの個性然り、地の分を含んだクリスピンの物語全体の描き方が上手いからではないだろうか。
それよりもクリスピンが意外とハマった理由は、ユーモアの描き方がバークリーに通ずるように感じたから?

この人の代表作は他に『消えた玩具屋』がありますが、次は手に入りやすい『白鳥の歌』を読んでみようと思います。

Home > 2011年08月

読書メーター
おてもとさんの読書メーター おてもとの今読んでる本
Booklog

Return to page top

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。